社会福祉士ムルソーの介護ブログ

介護現場の現状や、今後の介護がどうあるべきかについての話をします。また、新しい社会福祉の在り方「社会福祉2.0」を提唱していきます。

帰宅願望の強い認知症高齢者~介護をするスタッフも気持ちの余裕がなければ潰れてしまう~

ムルソーです

 

今回は、認知症の高齢者のお話をさせていただきます。

 

みなさんは、認知症についてどういった印象をお持ちでしょうか?

 

 

「同じ話を繰りかえす」

 

「昨日あったことを覚えていない」

 

「自分が何故ここにいるのは分からない」

 

 

どれも正解です。認知症の症状にも様々なのがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はここを出ていきたい」「なんで出ちゃいけないの?」「警察を呼んでください」

 

とある施設利用者のお話、仮にAさんとしておこう。

 

 

Aさんは、施設にて生活をしている。家は直ぐそばなので、歩いて帰ろうと思い、エレベーターに乗って下に降りようとするが、ボタンを押してもエレベーターは来ない。

 

 

 

エレベーターがようやく開いて、乗り込もうとすると、スタッフがやってきて、エレベータに乗るのを阻止する。

 

再び、エレベーターを待つが、全然来ない。Aさんは苛立ち、エレベーターのドアを蹴り付けた。だが、いくら蹴ってもエレベーターは来ない。

 

 

 

 

Aさんは、今度は自宅に電話しようとする。

電話を取って、自宅の番号を押す。

 

しかし

 

「おかけになった電話番号は、現在、使われておりません。番号が間違っているか...」

 

 

 

 

 

 

 

 

全然繋がらない。スタッフに電話を使わせるように頼んでも

 

「あぁ、この電話は壊れてるんですかねぇ」

 

「電話が込み合ってるみたいだから、また今度にしましょう」

 

などと返答がくる。

 

 

 

電話を取って、今度は110番を押す。警察を呼んで、助けを呼ぼう。

コールが鳴って誰かの声がする。しかし、警察とは少し違う様子だった。警察と連絡が取りたい。

 

警察とも繋がらない。じゃあ、119番。これも繋がらない。

 

 

Aさんは頭にきて、電話を叩きつけた。叩きつけられた音に一瞬スタッフはこちらを見るが、しかしスタッフは無関心な様子であり、直ぐに他のことをやり出す。

 

 

 

 

「私はここを出ていきたい」

 

 

 

「なんで出ちゃいけないの?」

 

 

「警察を呼んでください」

 

 

 

誰も、まともに答えてくれない

娘は、いつになったら会いに来てくれるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認知症の症状のひとつ「帰宅願望」

 

介護現場の経験者は、こういった利用者を見たことがあるかもしれません。

 

家に帰って、何をしようとしているのかは、人によって異なります。子供に食事を作ろうとしたり、仕事をしようとしたり、ただ単純に、自分の馴染みの空間に戻りたい、と願って帰宅しようとする人もいます。

 

そういった人に対し、どう対応するのが正解なのだろうか。

 

決まった答えはありませんが、基本的には他のことに注意を逸らす方法がベターだと思われます。

その人の好きなモノ(本だったりTV番組だったり)を提供したり、好きな話題を振ったりして、気持ちを落ち着かせることが基本的な対応になるのではないでしょうか。

 

 

 

しかし、帰宅願望の強い利用者相手に、そのような対応をすると、それなりに時間がかかります。

どうしても放置しがちになってしまったり、相手の行動を抑制する言動を取ってしまうこともあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認知症の利用者の介護をするには、スタッフも心の余裕を持つ必要がある

 

介護保険法では、利用者の人数に対し、配置しなければいけないスタッフの人数が決まっています。

その基準をクリアしないと、介護報酬が減額されたりもしますが、この基準をクリアしているからといって必ずしも環境の良い施設だとは言い切れないのではないでしょうか。

 

 

有給の消化が出来ていない、スタッフがよく体調を崩し、他のスタッフが替わりに出勤する、スタッフ間での関係が不仲である、そもそも基準がズレている、なんて可能性もある。

 

 

昨今、介護現場(高齢者施設に限らず障害者施設でもいえることです)での虐待が騒がれていて、介護の研修に行ったりすると、虐待事例の話が多く聞かれます。

 

 

そういう所に行くたびに思うのですが、研修やったからといって、現場の雰囲気が変わるわけじゃないんです。

 

 

現場から離れたところで、綺麗ごとをいくら行ったところでそれは解決にはならないわけです。替えるなら、その施設のスタッフが気持ちにゆとりを持てるようにするところからです。

 

 

「高齢者の尊厳」を謳うなら、それと同時に「スタッフの尊厳」も考慮に入れなければならないのではないだろうか。

 

 

現場からは以上です。